書くことは、呼吸をすること。
ー碧月はるーHaru Aotsuki
海のことば、空のいろ

【星の砂はどうやって生まれたのか】

折れそうな三日月を横目で眺めながら、車を走らせていた。行きつけの場所までなら、ナビなしで行けるようになった。この土地での生活が肌に馴染んでいることを感じるたび、どことなく不思議な気持ちになる。

引っ越し当日に食べた、お手製の引っ越し蕎麦の味。翌朝に見た、海から昇る朝日。どちらも未だ、鮮明に覚えている。
当時書いたエッセイを改めて読み返してみると、こんな一節があった。

【エッセイ】会いたい人に会うように、会いたい記憶に触れるように、私は海へいく | BadCats Weekly badcatsweekly.com

うっすらと明るくなってきた空から、朝の匂いがする。群青色の空と水平線の橙色の境目が、淡く霞んでぼやけている。朝陽は毎日昇るし、海も変わらずいつだって其処にあるのに、当たり前に繰り返されるその儀式にこんなにも胸を打たれるのはどうしてだろう。

この文章を書いたのち、何度この海岸沿いの朝日や夕陽を目にしたかわからない。何度見ても薄れることのない美しさを湛え、海と空は凛としてそこに在る。
渡り鳥さながら、数か所を転々として生きてきた。そのなかでも、現在住んでいる土地は驚くほど肌に合う。導かれるように訪れ、今ではここに骨を埋めたいとまで願っている。そんなことは生まれてはじめてで、自分でも少し驚いている。

ABOUT ME
碧月はる
エッセイスト/ライター。PHPスペシャルにエッセイを寄稿。『DRESS』『BadCats Weekly』等連載多数。その他メディア、noteにてコラム、インタビュー記事、小説を執筆。書くことは呼吸をすること。海と珈琲と二人の息子を愛しています。