書くことは、呼吸をすること。
ー碧月はるーHaru Aotsuki
HSC(ひといちばい敏感な子)の子育て

HSC(ひといちばい敏感な子)の特徴、理解と育て方について

HSC。もしくは、HSP。近年、ようやくこの言葉が世間でも知られるようになってきました。今日は、HSC(ひといちばい敏感な子)に焦点を絞ってお話していきたいと思います。

HSC(ひといちばい敏感な子)とは?

まずHSCとは、Highly Sensitive Childという言葉の頭文字を取って作られた略語です。childという言葉から分かるように、此処では「ひといちばい敏感な子ども」のことを指します。HSPとはHighly Sensitive Person。「ひといちばい敏感な人」要するに大人に対してはこちらの略語を使います。

割合としては、五人に一人がHSCであると言われています。思ったよりも多い確率、という印象を持たれるのではないでしょうか。ちなみに、HSCは生まれ持った性質であり、生育環境によるものではありません。

提唱者は、アメリカの心理学者であるエレイン・アーロン氏。子育てカウンセラーであり心療内科医でもある明橋大二先生が翻訳した『ひといちばい敏感な子』という書籍を通して、徐々に世間にもこの言葉が広まっていきました。

HSCを一言で表すと、『感受性の強い子ども』です。敏感であることは、神経質というマイナス面から見られることがよくあります。しかし実際にはプラスになることの方が遥かに多く、その子にしかない個性を伸ばしてあげられるかどうかは、周りの大人たちの知識や理解によって大きく変わってきます。

特に日本は、根性論や我慢が美徳とされる風潮が強い国です。理解を求めて勇気を振り絞って伝えた言葉が、『甘え』の一言でばっさり切り捨てられてしまうことも少なくありません。しかし、周りの声に惑わされる必要はないのです。必ず、その子に合った寄り添い方は見つかります。試行錯誤していく中で見えてくるものがきっとあります。その為には、まず『知ること』です。

HSC(ひといちばい敏感な子)の特徴とは?

HSCには様々な特徴があり、一概に『こうだからHSC』と決めつけられるものではありません。どれか一つの特徴が顕著に表れている場合、当てはまるものが少なくてもHSCである可能性もあります。

HSCには大きく分けて4つの特徴があると言われています。(明橋大二著作、『HSCの子育てハッピーアドバイス』を参照)

D=深く考える
O=過剰に刺激を受けやすい
E=共感力が高く、感情の反応が強い
S=ささいな刺激を察知する

それでは、一つずつ解説していきます。

  • D=深く考える
    物事を思考する力、方向性は人によって様々です。しかし、HSCの子どもたちは周りの子どもたちよりも明らかに多くの思考を常に巡らせています。そこまで深く考えること?と周囲の大人が驚くようなことも珍しくありません。HSCの脳は情報を深く処理する部位が活発で、1を聞いて10を知ります。その為、一度に色々な指示が飛んでくると容量オーバーとなり、パニックを起こしてしまうこともあります。
  • O=過剰に刺激を受けやすい
    大きな音や寒暖差、服のタグや繊維など、外的要因からくる刺激に敏感です。私自身HSPなのですが、私は服の繊維等は特に気になることはありません。しかし、大きな音が極端に苦手です。周りに『大袈裟だ』と言われることもありますが、どうしても身体が反応してビクッと震えます。ゲームセンター等の大きな音のする施設にも極力行きたくありません。15分以上そこに留まっていると、頭痛がしてきます。
  • E=共感力が高く、感情の反応が強い
    HSCの中で最も多いのが、こちらの特徴なのではないかと思います。人の心を読むことに長けていて、強い共感を示します。不公平なことが許せず、正義感が強い傾向にあります。それ故に友達の相談に乗ったり、テレビや本などで悲しい物語やエピソードに触れたりすると、極端に疲れてしまうことがあります。もちろんそれは悲しみのみではなく、嬉しいことや感動に対しても同じように強く共感することが出来ます。
  • S=ささいな刺激を察知する
    他の人は気付かないようなささいな匂いや音、環境の変化などにすぐ気が付きます。例えば家具の配置や人の服装などです。また体内の刺激にも敏感な為、薬や身体の痛みにも人より強い反応を示します。

実は、私の息子もHSCです。ここでは、息子のエピソードをご紹介します。

長男は子どもの頃からとても感受性の強い子どもでした。スーパーで泣いている子どもを見かければ自分も泣き出し、ニュースで悲しい出来事が流れると泣きながら加害者を怒る。どこまでも話を掘り下げていき、行き着く先がこれでした。
『自分がこうなったらどうしよう』
『お母さんがこうなったらどうしよう』
その不安から再び泣き出し、癇癪を起こす。毎日がその繰り返しでした。夜も寝つきが悪く、夜泣きをしては泣き叫ぶ。
周囲に頼れる人もいないなか、一人きりの育児。私は次第に、長男とどう接したらいいのか分からなくなっていきました。

あの当時HSCの知識があれば、私も長男ももっと楽に穏やかに生きられたことでしょう。

HSC(ひといちばい敏感な子)の育て方、対応について

前述した明橋大二先生は、こう提言しています。

『この子はこの子でいいんだ』という境界線を引くと、子どもは伸び伸びと成長します。”

まさに、この一言に尽きるのではないでしょうか。HSCのお子さんを育てているお母さんを悩ませている一番の要因は、周囲の無責任な励ましや叱責であると私は思います。私自身、何度言われたか分からないこの言葉。

『甘やかし過ぎなんじゃないの?』
『ちょっと神経質過ぎるんじゃない?』

HSCの長男をおよそ10年近く育ててきた私が出した結論はこうです。

知ろうとしない人たちには、勝手に言わせておきましょう

心を砕いて説明しても、分かってくれる人ばかりとは限りません。分かろうとしない人、受け入れようとしない人は、残念ですが存在します。そういう人たちとは、自分の心の中だけでいいので一度しっかり境界線を引きましょう。

HSCの子どもたちは、強い共感能力や敏感に察知する能力故に、自分の容量を越えた感情や情報を受け取ってパニックに陥ってしまうことが多々あります。表しかたは人それぞれで、泣き叫ぶ、引きこもる、怒る、など様々です。

そういう時はこちらもつい感情的になってしまいがちですが、ここで事を急いては逆効果です。気持ちに寄り添い、じっと待つ。時間がかかるように思えるかもしれませんが、これが一番の近道です。無理矢理こちらのペースを押し付けると、パニックはよりいっそう激しく、長くなります。急がば回れ。この言葉を、私自身常に心に留めておくようにしています。

HSC(ひといちばい敏感な子)を育てる喜び

ご自身やお子さんがHSC、HSPであることを、引け目に感じている方もおられるかもしれません。しかし、HSCの子どもたちは素晴らしい特性をたくさん持っています。

人の気持ちがよく分かるぶん、人に優しくできます。
慎重なぶん、危険を回避できます。
豊かな感受性を生かして、芸術方面やエンターテイメント等に優れた才能を開花させる人もいます。

決してマイナスイメージのレッテルではなく、素晴らしい個性として受け止めてあげて欲しいと思います。これは、親御さんのみならず、学校の先生や周囲の大人の方々にも言えることです。

HSCはその子に合った育て方を知ることで、長所がぐんぐん伸びていきます。お子さんに寄り添い、長所を褒めながら育てることで、敏感であることをプラスにしながら生きていけるようになります。否定の言葉ばかりでは、大人も子どもも心が枯れてしまうものです。

互いの理解を深め合い、違いを尊重しあえる社会になってくれることを、切に願います。

noteにて育児エッセイをまとめたマガジン、「君たちとのあれこれ」を公開しています。他にも日々の気付き、過去の原体験から伝えられることを綴っています。よろしければこちらも合わせて読んで頂けたらとても嬉しいです。

ABOUT ME
碧月はる
エッセイスト/ライター。PHPスペシャルにエッセイを寄稿。『DRESS』『BadCats Weekly』等連載多数。その他メディア、noteにてコラム、インタビュー記事、小説を執筆。書くことは呼吸をすること。海と珈琲と二人の息子を愛しています。