書くことは、呼吸をすること。
ー碧月はるーHaru Aotsuki
作品紹介

「お前は一つも悪くないって言ってんだろ、バーカ」

noteという媒体で、2019年5月から小説やエッセイを綴っています。
その中の記事のほとんどは、無料で読むことができます。これから紹介する小説も、本編はすべて無料で読むことができます「あとがき」と本編には無関係の短編小説1作品だけを有料設定にしてあります。

お前は一つも悪くないって言ってんだろ、バーカ

こちらの作品は、決して優しい作品ではありません。それでも、伝えたい想いを精一杯込めて書きました。
サイト内の記事にも書いてある通り、私は虐待サバイバーです。その原体験は、大事にしたいものとは到底言えません。しかし、だからこそ伝えられることがあります。

虐待被害者に共通している心理状態として、「自分が悪い」と思い込んでいる場合が多くあります。何故そのように思うのか。その要因として一番多いのは、親にそのように刷り込まれているからです。
「お前が悪いんだ」
「お前がこうさせたんだ」
「お前のためを思ってやったんだ」
このような言葉と暴力、暴言がセットで行われると、脳や心に歪んだカタチで一つの概念が刷り込まれます。

親が自分を傷付けるのは、自分に原因があるのだ。

この刷り込みができあがると、人は「助けて」が言えなくなります。何故なら、「自分が悪い」と思い込んでいるからです。誰かに相談しても自分が責められるのではないか。親と同じようになじられるのではないか。その恐怖が先に立ってしまい、SOSを出すことができなくなります。

その思い込みを壊したくて、この作品を書き上げました。生々しい描写も出てきますので、ご自身の精神状態と相談しながら、無理のない範囲で読み進めて頂けたらと思います。

想いのすべてをタイトルと本文に込めました。タイトルは、私の体験を知るたった一人の幼馴染がかけてくれた言葉です。私にとって、この言葉は生きていく糧となりました。

傷付けられた側が悪いなんてことは、絶対にありません。傷付ける側が悪いのです。そんな当たり前のことを覆してくるような人の言うことを聞く必要なんてない。例えそれが、血を分けた親であったとしても。

生きることと生き抜くことは全くの別物です。生育環境によりその難易度は大きく異なります。辛さを誰かと比べることに意味なんてない。自分の辛さは自分自身が引き受けるしかないのが現実です。
だからこそ、せめてこの言葉を自分と同じような経験をしてきた人、今も真っ只中にいる人たちに送りたい。

あなたは悪くない」

「生きて」

どんな過去があったとしても、笑顔になれる瞬間は必ず訪れます。
SOSを出すことを怖がらないでください。逃げていいのです。逃げてください。
あなたを虐げるものから、あなたは逃げる権利がある。あなたには、笑って生きる権利があるのです。
そこに行きつくまでの道のりが容易くないことは痛いほど分かっています。私自身、数えきれないほどの涙を流しました。正直、今でも苦しくなるときはあります。フラッシュバックも悪夢も、完全になくなったとは言えません。

それでも今、私は幸せに生きています。

この作品が、痛みだけではなく微かな光を伝えられるものでありますように。太陽のように明るい光にはなれなくとも、小さな星灯りのようにそっと夜空を照らすような。そういうものであったなら、これ以上の喜びはありません。

noteでは、子育てや日々のことにまつわるエッセイの他に、虐待サバイバーとして伝えたい想いを「サバイバーからの伝言」というマガジンの中に綴っています。そちらも合わせて読んで頂けたら、とても嬉しいです。

一人きりで辛い想いをしてきた人たちが、”自分は悪くなかった”と思える日がきますように。

ABOUT ME
碧月はる
エッセイスト/ライター。PHPスペシャルにエッセイを寄稿。『DRESS』『BadCats Weekly』等連載多数。その他メディア、noteにてコラム、インタビュー記事、小説を執筆。書くことは呼吸をすること。海と珈琲と二人の息子を愛しています。