紫陽花の古名は「あづさい」なのだと、教えてくれたのは祖母だった。「集まる」の「あつ」、藍色を示す「真藍(さあい)」、この二つを合わせて、藍色の花が集まって咲く花――「あづさい」という呼び名が生まれた。どんなものにも名前があり、由来がある。名付け親の愛情みたいなものがそこには垣間見えて、わずかに心が丸くなる。
近所で行われた「紫陽花まつり」に足を伸ばしたのは、つい先日のこと。広大な敷地に咲き乱れる様々な花色が、真っ青な空に映える。今年の梅雨は、あまりにも短かった。気象予報士もびっくりな気候に、水不足や農作物への影響が懸念されている。しかし、紫陽花は例年と変わらず美しく咲き誇っていた。
抜けるような青空。30度後半の酷暑。咲き乱れる紫陽花。本来ならばなかなか重ならないはずのこれらが、今年はぴたりと重なった。背中を汗がつたう。その滴が、シャツに染み込む。買ったばかりの麦わら帽子を目深にかぶり、目を細めて見上げた空には、夏の代名詞ともいえる入道雲。
「まだ7月に入ったばかりなのにね」
隣で紫陽花を眺めていた相方に話しかけると、彼はかすかに頷き、私にならって空を見上げた。
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